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これまで読んできたラノベやマンガの感想を書きまくります。。。過去の消えてしまったような作品に再度光を当てたい・・・

【他】まおゆう魔王勇者1〜経済学や農学、街づくりの歴史的発展を学べるラノベ〜


何気なしにふと立ち読みして思わず買ってしまったのが確か去年の今頃だったと思います。ファーストインプレッションは「独特!?」。内容よりも構成にオリジナリティがあふれ出ていました。


通常ライトノベルなら主人公目線か俯瞰かで物語が進行しますよね。キャラクター同士の会話とそれに伴う心情や状況の説明が織り交ざって物語は作られていくものです。しかしこの小説は「」のみなんです。あ、カギ括弧のみってことです。すべてキャラクター同士の会話で小説が構成されているところに面白さがあると思いました。


さらに、キャラクター全員に名前が無いのも独特だなぁと感じます。勇者はあくまでも「勇者」と呼ばれていて、魔王も「魔王」と劇中では呼ばれています。いろんな役割に扮する際はこの限りではありませんが、キャラクター全員が立場、身分、職業で呼ばれています。メイド姉・妹、商人、女剣士等々。


まだ独特な部分はあります。物語の導入がまさに独特でした。魔王と勇者が戦う物語というものは魔法や伝説の剣を駆使して武力対決するという展開になるのがよくあるパターンです。しかしこの作品は、勇者が魔王の玉座までたどり着き血統を挑もうとしたら魔王から「この我のものとなれ、勇者よ」といきなり仲間に誘い込まれます。そして話を聞き納得した勇者は魔王と同行するわけです。


そして魔王が行うのは交易や統治といった経済学的側面からの街づくりや、農業技術の伝達による商品作物の生産ノウハウの教授などであり、「勇者が世界を征服しようと目論む魔王を仲間と共に倒す」といったありがちな展開が全く出てきません。しかし、そのギャップが面白く惹かれるんです。そして「戦争が無い世界を作る」という重いテーマも経済が上手く機能すれば解決できるのではないか?と思えるような面白さが魅力的でした。


1巻ではそんな勇者と魔王との出会い、協力、そして拠点となる館で様々な人との出会い、農業の発展、農業技術を教会を通じて広める、、、といったような内容になります。これらすべてキャラクター同士の会話で成り立たせているんだから小説としては面白いですね。初めてこんな構成の小説を読んだものですから、驚きと楽しさを上手い具合に感じることができて結構私の中では高く評価してます。


2巻以降どんな展開が待ってるのか? 魔王と女剣士は勇者をどうやって落とすのか? 見どころはたくさんあります。2巻以降も楽しみながら読んでみたいと思います。


レーベル:エンターブレイン(出版社)
シリーズ:まおゆう魔王勇者