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これまで読んできたラノベやマンガの感想を書きまくります。。。過去の消えてしまったような作品に再度光を当てたい・・・

【ガ】やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8 〜八幡の姿勢に最も共感できた強烈な自意識の物語〜

八幡「いつも、ひとりだからな。そこに何か解決しなきゃいけないことがあって、それができるのは俺しかいない。なら、普通に考えてやるだろ。だから、周囲がどうとか関係ねぇんだよ。俺の目の前で起きることはいつだってなんだって俺の出来事でしかない。勘違いして割り込んでくんな」


8巻はKindle版が出るまで読むのを待つつもりだったんですが待ちきれなくて紙の書籍を久々に買ってしまいました。しかも初回限定盤。今回の得点はイラスト集でした。ぽんたん8さんの描く表紙や見開きページのイラスト、キャラクターの設定などが載せられており私的には大満足の特典でしたね。個人的にはドラマCDをもっと作ってほしいんですがそれは今後の展開に期待というところでしょう。


そしてこの8巻。昨日の仕事帰りに本屋で購入しその本屋に隣接しているスタバで少しだけ読もうとページを開いたんですが、その1時間半後全ページ読破してしまいました。ページをめくる手が止まらない。そして、没頭するくらい感情移入できた内容。あまりにも凄すぎて、6巻や7巻の感想をすっ飛ばして8巻の感想をすぐにでも書きたくなり今回筆を取った次第です。


そんな8巻のメインテーマは「生徒会長選挙」。八幡や雪乃がいる奉仕部に対して生徒会長選挙に関する依頼が平塚先生経由で舞い込んできます。予想できる展開はいかにして生徒会長に当選させるか、という話だと思いますが8巻は全くその逆。依頼内容は「生徒会長選挙で当選させないようにしたい」というもの。立候補した、というかクラスメイトにいつの間にか立候補させられてしまったというサッカー部マネージャーの一色いろはが依頼人です。見た目は可愛いけど八幡曰く自分の可愛さを上手く演出している嫌な女子高生といったキャラクター。そんな彼女を当選させないように知恵を貸すわけです。


当然この作品の展開は青春でもなければラブコメでもありません。主人公の八幡は「ぼっち」です。6巻の学園祭にて怠惰な実行委員を働かせるために自分を犠牲にした振る舞いをとったり、7巻の修学旅行にて現状を維持するためにまたもや自分を犠牲にした悲しい解決方法を堂々と実行してしまえる主人公。8巻では冒頭からそんな斜め上の解決方法を提示するんですが雪乃から即座に却下されてしまいます。まるでそんな八幡の悲しい姿は見たくないとでも言うかのような姿勢で少し感情的になりつつも反発し、それに結衣も同調します。


ただ、雪乃や結衣の考える解決策も実効性に乏しく、且つ人に任せて裏から操作しようとするもの。生徒会長選挙で依頼人を落選させることはできるかもしれないが、その後の生徒会運営に関しては考えが追い付いていない不十分な解決策。当然八幡はそんな案を否定します。修学旅行で起こったとある事件以降、八幡と雪乃、そして結衣の関係がギクシャクしてしまい、それが奉仕部の活動に大きな影響を与えてしまっているわけです。


さらに、そのイライラが影響したのかはわかりませんが、妹の小町にまで辛く当たってしまい一時険悪なムードにもなってしまいます。そして家に帰り辛い八幡が街で暇をつぶそうとドーナツショップに入ったらたまたま居た陽乃と遭遇し、八幡の人間関係に余計な口を無理やりはさんでくるんですね。八幡が昔告白した中学生時代の同級生、そしてリア充イケメンの葉山。彼ら彼女らとの関係に口を出し無理やり遊びに行かされてしまうんです。


ここでの八幡の主張は一貫しています。自分の価値観と他人の価値観は異なっているのが当然。だから、他人の価値観を無理やり押し付けてくるような奴らとは絡まない。また、自分の内面に深く入ってくるような奴らとは距離を置く。葉山や陽乃に対してもこのスタンスで押し通すわけですが、陽乃に電話で半ば強制的に葉山と共に遊びに行かされることに。。。


そう、この8巻では八幡は一色の生徒会長選挙落選のための解決方法を考える上で、雪乃や結衣との関係、妹の小町との衝突、さらには葉山や昔の同級生との絡みと様々な人間関係が繰り広げられます。ただ、八幡は1人でありそれは今も昔もこれからも変わらないわけで。だから誰にも迷惑をかけず1人で解決策を講じ行動するのが当たり前だとずっと思っているし、その立場に誇りすら抱いているような堂々とした姿勢を取っていました。でも、とうとうそんなスタンスを少し曲げ周りに協力を求めるようになります。材木座や戸塚、さらには川崎にまでも相談する八幡。成長なのかどうかはわかりませんが、明らかにこれまでとは違うスタンスで行動し始めます。


しかし、その裏で生徒会長選挙の解決をするために、雪乃は雪乃で、結衣は結衣である解決案を持って動くんですが、八幡はその行動だけは許せず材木座たちと作った解決案を実行し、雪乃や結衣の思惑をすべて消し去るべく暗躍するわけです。うん、この解決方法がまた面白い。許されるのかどうか微妙な行動。でも、強烈にインパクトを与えることができる手段。結果、すべてが丸く収まるような結論を導き出してしまいます。


そんな結論が正しかったのかどうかはわかりませんが一見全てが解決したかのような状態にはなりました。しかし、雪乃は八幡の行動に対し何やら煮え切らない態度で反応しており、今後この2人の関係がどのような展開を見せるのか全く読めなくなってきます。八幡は絆や上辺だけの付き合いを否定する性格。でも今回、態度を多少なりとも軟化させたことが雪乃には快く映らなかったのかもしれません。絆という薄っぺらく脆い欺瞞を信じる人とは違う現実主義者である八幡。そんな八幡と何か似たようなものを感じている雪乃は八幡の今回の行動は許せなかった。だからこんな態度を取ってしまったのかなとも思うわけで。


そしてなんだかんだ言いつつキーパーソンの結衣。彼女は八幡のことが好きなんだろうけど、空気を読んだり八幡の言葉にショックを受けたりしつつなかなか自分の想いを伝えられないのかなと感じます。しかし雪乃も八幡のことを憎からず想っている節が見受けられるのも事実。でも八幡はそういう想いを事前に察知し現状維持を貫こうとして動くんでしょう。ラノベ的な展開を考えるなら、今後八幡は似た者同志の雪乃と一緒になるのかなと思っていますが。。。


そんなこんなで非常に読みごたえのあった8巻。1巻から8巻まで全て読みましたが個人的にはこの8巻が一番好きになりました。ここまで強烈に高校生の自意識ってやつを表現し、全く救おうとせず淡々と高校生活を描く著者の姿勢には尊敬の念すら抱かされます。それにしても本気で9巻が待ち遠しい。またアニメ2期をもしやってくれるなら確実に見たいですね。というわけでこれからまた8巻を再読したいと思います。


そういや今回最も気に入った陽乃の八幡に対するセリフがありました。

陽乃「私と友達っていうのも変だよね。うーん、お姉さんとか? いや、あるいはお義姉さん・・・あ、間を取って彼女っていうのはどう?」

こんなことをさらっと言えてしまうリア充美人。でも裏が読めないところが怖いですね。。。


レーベル:ガガガ文庫
シリーズ:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。